ロストメディアである「ロンドンオリンピックのプロモーションビデオ」について調べました。
2008年、北京オリンピックが開催されたこの年に、次期開催地であるロンドンが自国の魅力を伝えるプロモーションビデオを上映しました。
しかし、この映像の中に、とある殺人鬼の肖像画が使用されていました。
イギリスを中心に大きなニュースとなりましたが、その後、上映を自粛した為、現在に至るまでこの映像は発見されておりません。
この2008年に上映されたプロモーションビデオについて調べた内容を以下にまとめます。
概要
このプロモーションビデオに関する情報は「Lost Media Wiki」に掲載されています。
・Lost Media Wiki
https://lostmediawiki.com/2012_Olympics_Promotional_Video_(partially_found_controversial_Olympic_advert;_2008)
他、2008年当時のニュース記事にも掲載されています。
・AFPBB News
https://www.afpbb.com/articles/-/2510889
・The Guardian
https://www.theguardian.com/uk/2008/aug/24/olympics2012
https://www.theguardian.com/uk/2008/aug/25/olympics2012.politicsandsport
・BBC News
http://news.bbc.co.uk/2/hi/7580261.stm
複数記事から、概要をまとめます。
・北京オリンピックの閉会日、北京に建設されていた「ロンドン・ハウス(伦敦之家)」で、オリンピックがロンドンへ引き継がれることを祝うパーティーが開かれていました。
→「ロンドン・ハウス(伦敦之家)」とは、ロンドンの魅力を紹介する施設であり、
北京オリンピック開催の為に建設されました。
・このパーティーの最中に、「ロンドン観光局(Visit London)」が制作した3分間のプロモーションビデオが上映されました。
・このプロモーションビデオに、ムーアズ殺人事件の犯人の一人であるマイラ・ヒンドリー(Myra Hindley)の肖像画が含まれていました。
・この肖像画は、画家のマーカス・ハーヴェイ(Marcus Harvey)が1995年に制作したものです。
・パーティーには、ゴードン・ブラウン首相(当時)やボリス・ジョンソン ロンドン市長(当時)などの要人も出席しており、各報道担当者はこの映像に対して非難しました。
・この事態を受けて、ロンドン観光局(Visit London)は下記声明を発表しています。
This is a general three minute video of London in which an artwork by Marcus Harvey very fleetingly appears.
https://www.theguardian.com/uk/2008/aug/24/olympics2012
The video is not for general public use and has been used many times over the last few years to show to the tourism trade.
There has never been a complaint made about the video up until this point. However, if any offence has been caused, we will withdraw it from use with immediate effect.
これはロンドンを紹介する一般的な3分間の映像であり、マーカス・ハーヴェイの作品が非常に短く登場します。
google翻訳
この映像は一般公開を目的としたものではなく、過去数年間にわたり観光業界向けに何度も使用されてきました。
これまでのところ、この映像について苦情が寄せられたことはありませんでした。 しかし、もし不快に感じられた方がいらっしゃる場合、直ちに使用を中止いたします。
・この騒動以降、マイラ・ヒンドリーの肖像画が含まれている映像は公開されておらず、現在も見つかっていません。
ムーアズ殺人事件
映像に使用されていたマイラ・ヒンドリーとはどのような人物なのでしょうか。
いくつかの記事に詳細が載っていますので、参考としてURLを掲載します。
・マジソンズ博覧会
https://www.madisons.jp/murder/text/brady&hindley.html
・Wikipedia(英語版)
https://en.wikipedia.org/wiki/Moors_murders
・All That’s Interesting
https://allthatsinteresting.com/myra-hindley-moors-murders
複数記事から、事件の概要をまとめます。
・1963年7月から1965年10月にかけて、イングランドのマンチェスター周辺で連続殺人事件が発生しました。
・被害者は5人います。十代の少年少女であり、遺体はサドルワース・ムーア(Saddleworth Moor)という荒野に埋められました。
この荒野の名前が、ムーアズ殺人事件の名称の由来です。
・加害者はイアン・ブレイディ(Ian Brady)とマイラ・ヒンドリー(Myra Hindley)です。
・ブレイディは、アドルフ・ヒトラーやマルキ・ド・サドの著書を好んで読んでいたそうです。
・2人は職場で出会ったことをきっかけに付き合い始め、ヒンドリーはブレイディの思想に感化されていきました。
・1963年7月初旬頃から、ブレイディが「殺人を犯すこと」について話し始めるようになりました。
これは、「レオポルドとローブ(Leopold and Loeb)」の事件を元に制作された「強迫(Compulsion)」という映画から影響を受けたと言われています。
・2人は次々と殺人を実行しました。5人目の殺人の時に、ヒンドリーの義弟であるデイビッド・スミス(David Smith)を仲間にしようとしましたが、スミスが自供した為、2人は逮捕されました。
・裁判の後、2人には終身刑が言い渡されました。
・2002年11月15日、ヒンドリーは心臓疾患及び気管支肺炎で亡くなりました。60歳でした。
・2017年5月15日、ブレイディは慢性閉塞性肺疾患で亡くなりました。79歳でした。
・事件の残忍さから、ヒンドリーはマスコミから「英国で最も邪悪な女性」と評されていたそうです。
参考として以下にブレイディとヒンドリーの写真を掲載します。
(左:ブレイディ、右:ヒンドリー)

マーカス・ハーヴェイ作「Myra」
マーカス・ハーヴェイが制作した「Myra」を以下に掲載します。

画家・ハーヴェイはどのような意図でマイラ・ヒンドリーの肖像画を制作したのでしょうか。
ハーヴェイと、ヒンドリーの肖像画についていくつか情報がありましたので、以下にURLを掲載します。
・Wikipedia(マーカス・ハーヴェイの記事)
https://en.wikipedia.org/wiki/Marcus_Harvey
・Wikipedia(マイラ・ヒンドリーの肖像画の記事)
https://en.wikipedia.org/wiki/Myra_(painting)
・Widewalls
https://web.archive.org/web/20200928162705/https://widewalls.ch/magazine/sensation-art-exhibition
・Curious Creativities
https://curiouscreativities.wordpress.com/product
上記記事より、肖像画「Myra」に関する情報をまとめます。
・「Myra」はマーカス・ハーヴェイによって1995年に制作されました。
・この作品は、1997年にロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ(Royal Academy of Arts)で開催された「センセーション展(Sensation)」で展示されました。
・この作品は、無数の子供の手形で描かれているそうです。
・この作品は非難の的となり、インクや卵を投げつけられたそうです。
・ハーヴェイはこの作品について、以下コメントを残しています。
The whole point of the painting is the photograph. That photograph. The iconic power that has come to it as a result of years of obsessive media reproduction.
https://en.wikipedia.org/wiki/Myra_(painting)
この絵画の核心はあの写真だ。まさに“あの写真”。長年にわたる執拗なメディア報道によって、あの写真に象徴的な力が宿ったのだ。
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他に、以下のようにも語っています。
I know enough to know that she probably didn’t do any of the murders, that she was just in a relationship where she was probably too attached to the man who was doing it to extricate herself. That her life was probably too dull and boring to throw the relationship away … I don’t believe that’s 30 years’ worth of reputation as one of the most vile and notorious murderers in British criminal history.
https://en.wikipedia.org/wiki/Myra_(painting)
私は、彼女(ヒンドリー)が実際にはおそらく殺人そのものは行っていなかったことを知っています。彼女は、そうした行為を行っていた男性にあまりにも執着しすぎて、その関係から抜け出せなかっただけなのでしょう。おそらく彼女の人生はあまりにも退屈で単調だったため、その関係を捨てることができなかったのです……。私は、彼女が“イギリス犯罪史上最も凶悪で悪名高い殺人犯の一人”として30年も名を残すほどの人物だったとは思っていません。
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・文化研究学者のジェニファー・フリードランダー(Jennifer Friedlander)は、この作品について「“無垢な子どもの小さな手形” と “大人たちの堕落した世界” を巨大なキャンバス上で対比している」と述べています。
センセーション展の動画がありましたので、参考として以下に掲載します。
6:47~7:20に「Myra」が映っています。
一部見つかっている映像
話が脱線しましたが、2008年に上映されたプロモーションビデオについて、映像の一部分のみ発見されています。
下記YouTubeは中国中央テレビ(CCTV)の報道映像ですが、51秒に「Myra」が映っています。
「Myra」が映っている瞬間を確認することはできましたが、プロモーションビデオの完全版は現時点でも見つかっておりません。
まとめ
ロストメディアの「2012年オリンピックのプロモーションビデオ」を調べた内容をまとめます。
・北京オリンピックが閉会日、北京に建設されていた「ロンドン・ハウス(伦敦之家)」で、ロンドンの魅力を伝えるために3分間のプロモーションビデオが上映されました。
・映像を制作したのは「ロンドン観光局(Visit London)」です。
・この映像にムーアズ殺人事件の犯人の一人であるマイラ・ヒンドリー(Myra Hindley)の肖像画が含まれていた為、イギリスを中心に騒動になりました。
・この映像は、以降上映されることはなく、現在に至るまで視聴することはできません。
・YouTubeで映像の一部を確認することができますが、プロモーションビデオの完全版は現時点でも見つかっておりません。


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