ロストメディアの「1979年のNHK版アンパンマン」について調べてみた

ロストメディアの「1979年のNHK版アンパンマン」について調べました。

アンパンマンとは、やなせたかし原作の童話作品シリーズです。
幅広く展開していますが、絵本やアニメが特に有名です。

1988年に日本テレビ系列でアニメ放送が開始しましたが、それ以前の1979年にNHK総合版で放送されたことがありました。

しかし、NHKで放送された映像は現在ロストメディアとなっています。

この作品について調べた内容を以下にまとめます。

「1979年のNHK版アンパンマン」概要
放送履歴
ロストメディアとなった要因
同時期の他放送も殆ど見つからない
アニメは紙芝居形式だった？
まとめ
余談：16ミリフィルム

「1979年のNHK版アンパンマン」概要

1979年にNHKで放送されていたアンパンマンの概要を以下にまとめます。

・NHK版アンパンマンは、1979年3月13日(火)午前09:30〜09:55に放送された『春休みこどものひろば』という番組の、「おはなしえほん」というコーナーで放送されました。

・関係者は以下の通りです。
【スタッフ】
脚本：やなせたかし
音楽：いずみたく
アニメーション：毛利厚
【声優】
あんぱんまん、ジャムおじさん、バイキンマン、ナレーター：中村メイコ

・再放送は5回ほど行われました。
本放送と再放送の履歴は後述します。

・後にNHK総合版の金曜日19時台後半の枠で放送する話がありましたが、「アニメ三銃士」と競って敗れてしまったそうです。
やなせたかしさんは自伝『人生なんて夢だけど』(出版：フレーベル館)で、「ぼく自身もあまり乗り気でなかったのは、体調を崩していて無理に仕事を増やしたくなかったのです」と述懐しています。

NHK版アンパンマンの情報は以下サイトを参照しました。
・Wikipedia – アンパンマン#アニメ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%91%E3%83%B3%E3%83%9E%E3%83%B3#%E3%82%A2%E3%83%8B%E3%83%A1

・Lost Media wiki
https://lostmediawiki.com/Anpanman_(lost_first_anime_adaptation_of_manga_series;_1979)

・ロストメディア日本語非公式wiki
https://w.atwiki.jp/lostmediatranslation/pages/97.html

・Rakuten infoseek
https://news.infoseek.co.jp/article/magmix_317894

・ぼくらのアンパンマン文化
http://ss584802.stars.ne.jp/anpan/nhk.html

放送履歴

NHK版アンパンマンの本放送と再放送の番組情報がNHKアーカイブスにあります。

参考として以下に載せておきます。

【本放送】
番組名：春休みこどものひろば
日時：1979年3月13日(火)午前09:30〜09:55
URL：https://www.nhk.or.jp/archives/chronicle/detail/?crnid=A197903130930001300100

【再放送】
番組名：夏のこどもひろば
日時：1979年7月17日(火)午前09:30〜09:55
URL：https://www.nhk.or.jp/archives/chronicle/detail/?crnid=A197907170930001300100

番組名：夏のこどもひろば（再）
日時：1979年7月17日(火)午後05:35〜06:00
URL：https://www.nhk.or.jp/archives/chronicle/detail/?crnid=A197907171735001300100

番組名：春のこどもひろば
日時：1980年4月1日(火)午前09:30〜09:55
URL：https://www.nhk.or.jp/archives/chronicle/detail/?crnid=A198004010930001300100

番組名：春のこどもスタジオ
日時：1981年03月10日(火)午前09:30〜09:55
URL：https://www.nhk.or.jp/archives/chronicle/detail/?crnid=A198103100930001300100

番組名：夏のこどもスタジオ
日時：1982年07月20日(火)午前09:35〜09:55
URL：https://www.nhk.or.jp/archives/chronicle/detail/?crnid=A198207200935001300100

ロストメディアとなった要因

NHK版アンパンマンがロストメディアとなった要因として、映像の保存体制がまだ整っていなかったのではないかと考えられます。

人工知能学会誌(18巻3号)に「NHKアーカイブス一制作から保存まで一」という特集記事が掲載されています。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsai/18/3/18_224/_pdf
こちらに、NHKの映像の保存状況についての記載があります。

2・1 コンテンツの保存状況

残念ながら，初期のテレビジョン番組は，ほとんど残っていない．なぜならば，VTRがなかったからである．
＜中略＞
VTR導入後も，ビデオテープが高価だったため，同じテープを何百回も使用し，多くの番組が残っていない．NHKが本格的に番組を保存しはじめたのは，1981年からである．
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsai/18/3/18_224/_pdf

NHKが本格的に番組を保存し始めたのは1981年からです。

アンパンマンが放送されていた時期は1979～1982年なので、まだ保存体制が完全には整っていなかったのではないかと考えられます。

同時期の他放送も殆ど見つからない

1979年に「春休みこどものひろば」は19回放送されています（1979年3月12日～3月31日）。

「春休みこどものひろば」の放送回一覧は以下URLの通りです。
https://www.nhk.or.jp/archives/chronicle/search/?keyword=%E6%98%A5%E4%BC%91%E3%81%BF%E3%81%93%E3%81%A9%E3%82%82%E3%81%AE%E3%81%B2%E3%82%8D%E3%81%B0

アンパンマンのみならず、1979年の他の放送回を探しても、映像に関する情報は殆どありません。

この時期に放送していた映像は、基本的に残されていないのかもしれません。

因みに、調査範囲を1970年代後半～1980年代前半に広げた場合、「ペリカンおばさん(1976～77年)」「おもちゃおじさん(1978～79年)」「ミューミューニャーニャー(1979～83年)」というNHK番組の保存状況に関する情報がありました。

資料の保管状況を確認すると，遺族から台本の寄贈を受けたことで「ペリカンおばさん」は41話分の台本が見つかったが，映像は残されていない。「おもちゃおじさん」は後半8話分が欠落しているものの，30話分の台本と1話分の映像が現存している。「ミューミューニャーニャー」は後半47話分の台本と75話分の映像が残っている。
https://www.nhk.or.jp/bunken/d/_data/research/domestic/BUNA0000010740080003/files/20240901_5.pdf

この時期の映像は、残っているものもあれば、完全に失われているものもあり、保存状況にムラがあります。
保存体制は整っているとは言い難いです。

今後発見されるとしたら、当時番組を録画していた方からの寄贈という手段が現実的ですが、可能性としてはあまり高くないと推測しています。

アニメは紙芝居形式だった？

どのようなストーリーが放送されたのかは明らかになっていません。

５ちゃんねるに、“NHK版アンパンマンを見た記憶がある”という書き込みがありました。

2019/07/18(木) 11:27:13.96　ID:y68BX3Uj

私は日テレで放送される以前から「アンパンマン」を知っていました
確か教育テレビの子供向け番組のワンコーナーで紹介されていたと思います
それは正確にはアニメではなく、絵本の読み聞かせみたいな感じで、絵は全て止め絵だったと記憶していますが？
https://mao.5ch.net/test/read.cgi/ranime/1498810175

他、「ぼくらのアンパンマン文化」というサイトに、やなせたかしさんの自伝『痛快!第二の青春　アンパンマンとぼく』に関する記載があります。
http://ss584802.stars.ne.jp/anpan/nhk.html#03
こちらの自伝でNHK版アンパンマンについて触れており、「紙芝居みたいな形式だったとのこと。」と記載しています。

「絵は全て止め絵だった」「紙芝居みたいな形式だった」という証言がありますので、アニメーションではなく、複数枚の絵で構成されていたと推測されます。

まとめ

ロストメディアの「1979年のNHK版アンパンマン」について調べた内容をまとめます。

・再放送は5回ほど行われました。
再放送日は、「1979年7月17日」「1980年4月1日」「1981年3月10日」「1982年7月20日」です。

・ストーリーは明らかになっていませんが、アニメーションというよりも複数枚の絵で構成されていたと推測されます。

・NHKが本格的に番組を保存し始めたのは1981年からです。
この時期もしくはそれ以前の映像は残されていない可能性が非常に高いです。
今後発見されるとしたら、当時番組を録画していた方からの寄贈という手段が現実的です。

余談：16ミリフィルム

Wikipediaのアンパンマンの記事に、1984年の16ミリフィルムに関する記載があります。

16ミリ版

1984年、『アンパンマンとばいきんまん』と『アンパンマンまじょのくにへ』の2作品が16ミリのアニメ作品になったことがある。やなせによると、この16ミリ版はフレーベル館の自主制作でやなせはほとんど関与出来ず、当時のテーマソングだった『怪傑アンパンマン』が使用されているもののパン工場が街中にあるなどの設定改変や、絵本では明確に描かれなかったばいきんまんの最後を死亡したことにするなどのアレンジにかなりの不快感を示していたために市販化はされなかったが一部の図書館で視聴が可能。後述の日本テレビ版の関係者がアニメ化を打診しに来た際に資料映像としてプレゼンされたという。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%91%E3%83%B3%E3%83%9E%E3%83%B3

「アンパンマンとばいきんまん」「アンパンマンまじょのくにへ」の２作品が制作されたのですが、こちらの映像は確認することができます（ギリシャ語版とアラビア語版のみ）。

【アンパンマンとばいきんまん(ギリシャ語版)】