昭和29年に秋田県で起きたとされている丑の刻参り事件について調べてみた

事件

古くから伝わる呪術のひとつとして、丑の刻参りがあります。

藁人形と五寸釘を使用して対象の人物に災いを与えるという有名な呪術です。

昭和29年に、この丑の刻参りで呪いをかけた人物が警察に逮捕されたという事件が存在したそうです。

その事件について詳細を調べてみました。

事件の概要

exciteニュース丑の刻参りに関する記事がありました。
https://www.excite.co.jp/news/article/Tocana_201408_post_4716/

こちらの記事には、丑の刻参りに必要な道具作法についてまとめられています。

そして、昭和29年に起こったとされる事件についての記載もありました。

その事件に関して、概要を抜粋します。
・事件は昭和29年秋田県秋田市で発生しました。
・被害男性は、女性関係のもつれが原因で、とある女性から恨まれていました
その女性が丑の刻参りを始めた頃から、被害男性は胸が痛み出し、医師の診断を受けるも病因は不明だったそうです。
・被害男性が警察に相談したことから、女性が丑の刻参りを実行していることが発覚しました。
・女性は脅迫罪で逮捕されたそうです。
・女性が逮捕されてから、被害男性の胸の痛みはなくなったそうです。


他のサイトの丑の刻参りに関する記事にも、同様もしくは類似した事件が掲載されていました。

類似した事件に関して、概要を抜粋します。
・事件は昭和29年秋田県秋田市で発生しました。
突然胸が痛み出した田中義江さんが医師の診断を受けるも、病因は不明だったそうです。
・田中さんの交際相手である山本鉄也さんが警察に行き、「丑の刻参りによる呪いのせいだ」と訴えました
・山本さんの元交際相手である堀田清子さんは、山本さんを諦めきれなかった為、田中さんに対して丑の刻参りを実行していました
堀田さんは脅迫容疑で逮捕され、それから田中さんの胸の痛みがなくなったそうです。

最初に紹介した事件内容と酷似しています。


他に、Wikipediaの「丑の刻参り」の記事について2009年7月4日のアーカイブを確認したところ、類似した事件が掲載されていました。

判例として、太平洋戦争直後の1955年(昭和30年)秋田県秋田市金足で夜間、夫の不倫相手の名前を書いた紙を五寸釘で神木に打ちつけ、呪い殺そうと願を掛けていた農家の主婦が近隣住民から通報を受けた駐在により逮捕された。被害者側は殺人未遂罪で起訴しようとしたものの、裁判所は呪いと殺人の間に因果関係を立証することが出来ず、「たとえ迷信であっても生命身体に害を与える目的の行為」としてやむなく脅迫罪を適用し書類送検となった。この判例により、たとえ人を呪い殺したところで脅迫罪などは適用されても、殺人罪には問われないことが証明された。

https://web.archive.org/web/20090704083425/https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%91%E3%81%AE%E5%88%BB%E5%8F%82%E3%82%8A

因みに、現在の「丑の刻参り」の記事には、上記の事件に関する内容は削除されています
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%91%E3%81%AE%E5%88%BB%E5%8F%82%E3%82%8A

事件は実際にあったのか?

上記で紹介したような、昭和29年頃に秋田県で起きたとされる事件は事実なのでしょうか?

レファレンス協同データベースというサイトに、丑の刻参りの事件に関する質問秋田県立図書館が回答しているデータがありました。
https://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000316901

秋田県立図書館は下記観点から事件について調べたそうです。

インターネット検索
  →有力な出典は見つからず

秋田県立図書館デジタルアーカイブ検索
  →該当の事件は見つからず

データベース(判例秘書)検索
  →秋田地裁の昭和29年~昭和39年の判例に該当の事件は見つからず

秋田魁年鑑の年間の主要ニュースの項目を確認
  →昭和29年版、昭和30年版、昭和34年版の秋田魁年鑑に該当の事件は見つからず

NDC分類147(超心理学、心霊研究)、326(刑法、刑事法)の棚をブラウジング
  →該当の事件は見つからず

調べた結果、事件の詳細を見つけることはできなかったようです。

事件の出典元について

唐沢俊一 まとめwikiというサイトに、丑の刻参りの事件に関する記載がありました。
https://w.atwiki.jp/tondemo/pages/58.html

唐沢氏が楽工社から出版した「奇人怪人偏愛記」(初版:2006年)という書籍のP161~162で紹介されているそうです。

ただ、こちらの書籍には出典元である判例や新聞記事に関する記載はありません


この事件の内容は、FAR EAST REESARCH1998年2月1日に掲載していた「呪いのわら人形の謎」という話と、非常に酷似しているそうです。

FAR EAST REESARCHのアーカイブから一部引用します。

昭和29年秋田市の田中義江さんは、突然胸の痛みで倒れた。医者に行ったが、原因は不明。数日後、山本鉄也さんが警察に 「彼女はワラ人形の呪いをかけられている。」と訴えた。山本さんは、数年前から堀田清子さんと交際していたが、 義江さんのことが好きになり別れ話を持ち出した。しかし、清子さんは諦めきれずにやり場のない怒りを義江さんに向けた。 清子さんは幼少の頃に祖母から聞き伝えた「丑の刻参り」を思い出し、深夜3時頃近所の神社で白装束に身を包み義江さん をかたどったワラ人形と名前を書いた紙を「呪い死ね」と祈りながら何日も五寸釘で打ち付けた!!そして義江さんは倒れた。 警察は検討した結果、清子さんを脅迫容疑で逮捕した。すると途端に義江さんの体は回復し、周囲の人を唖然とさせたのだ。

https://web.archive.org/web/19981202052703/http://www.ntv.co.jp:80/FERC/research/19980201/f0313.html

FAR EAST REESARCHとは、日本テレビで放送されていた「特命リサーチ200X」並びに、続編である「特命リサーチ200X-II」に登場する架空の会社の名前です。
http://www.ivstv.co.jp/old/archives/programs/past/
(上記URLの「特命リサーチ200X」「特命リサーチ200X-II」の紹介文にFAR EAST REESARCHに関する記載がある)

「特命リサーチ200X」の放送リストをまとめているサイトがありました。
https://summary.fc2.com/summary.php?summary_cd=100610604
やはり、1998年2月1日に「呪いのわら人形の謎」という回が放送されていました

「特命リサーチ200X」の内容の信憑性について

「特命リサーチ200X」は都市伝説やオカルトから健康に関することまで、幅広いジャンルを取り上げていました

Wikipediaの「特命リサーチ200X」の記事に、調査内容の信憑性に関する記載がありましたので、引用します。

毎回の調査・報告内容は、番組「独自の調査」によるものとされている。エンディングのスタッフロールには、調査に使用した施設や参考文献などを「リサーチ協力」として提示していたものの、それらは施設名や書名を出すだけの非常に簡素なものだった。なお、そういった調査・検証をいったい何処の誰が行い、結論を出してまとめているのかについては曖昧にされていた。はっきりとした原因を突き止められなかった現象については、とりあえず「真相がわかり次第、追って報告する」というナレーションで締めくくってその場は終了とするのが恒例になっていたがその後も続報が無く、番組自体の終了によって結局解明されないままとなった依頼も少なくなかった

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%89%B9%E5%91%BD%E3%83%AA%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%81200X

調査対象について、参考文献などには詳しく触れられないことがあったそうです。

また、調査対象の真相についても曖昧なものが少なからず存在し、そのほどんどは解明されないまま番組が終了してしまったそうです。

FAR EAST REESARCHの「呪いのわら人形の謎」のアーカイブにも、事件に関する参考文献が記載されていないことから、この丑の刻参りの事件は創作である可能性が高いと考えられます。

まとめ

昭和29年に起こったとされる丑の刻参り事件について調べました。

調べた限り、1998年2月1日に日本テレビで放送された「特命リサーチ200X」「呪いのわら人形の謎」という回が最も古い出典でした。

こちらの内容をアーカイブから確認したところ、参考文献や新聞記事などが記載されていない為、創作である可能性が高いと考えられます。

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